
ブランディングやマーケティングに関するご質問で、「まず何から始めるべきですか?」「成果はどう出すんですか?」というご質問を多くいただきます。
今回の記事ではこうしたブランディングやマーケティングって実際何をすれば良いのか問題について、少々強引に終止符を打ちたいと思います。色々方法論も書きたいところですが、この記事では本質的なことしか書きません。
そして、私たちリコルクが大切にしていることもお伝えできたらと思います。リコルクってこういう会社なんだ、と思ってもらえたら嬉しいです。
成果が出ない最大の要因は”理解不足”にある
最初に結論から。
「まず何から始めるべきですか?」
「成果はどう出すんですか?」
この問いへの私の答えはシンプルです。「理解を深めること」。
ブランディングもマーケティングも、結局のところ“理解”がすべて。伝えたいことが届かない、差別化できずに価格競争に巻き込まれる——そうした問題の本質は、ブランド周辺に対する理解不足にあります。
つまり、どんなに理解したつもりでも成果が出ないとすれば、それは対話の機会や試行錯誤(アクション)の回数が少なく、理解が及んでいなかったということ。
理解は、ただ考えるものではなく、手を動かし、言葉を交わし、何度も確かめる中で深まっていくものです。
私自身も過去に営業マンとして働いていた頃、この理解不足が原因で数多くの失敗を重ねてきました。クライアントへの提案時に、クライアントの社内体制やリソース状況を深く理解せず、実現が難しい提案をしてしまったり、自社商品の強みや独自性を理解せずに、ただ性能や製品情報だけを紹介してしまったり。
もちろん、それでは成果はついてきませんでした。
余談ですが、私がこの記事を書こうと思ったのは、活用しているツールを見直す前に、販促物のデザインを気にする前に、流行のマーケティング手法に飛びつく前に、「もっと身の回りのことについて理解を深めませんか」と強く伝えたかったからです。 それくらい、私たち自身も”まずは理解すること”を大切にしています。
理解を深めるべきポイント
プロジェクトを進めるうえで理解を深めるべきことは、主に以下の要素に集約されます。
- 代表の方のパーソナリティ
- クライアント企業の歴史や今後の構想
- クライアント企業に影響を及ぼすであろう社会の変化
- 展開されている事業が生まれた経緯や事業の目的
- 現在直面している課題
- 企業カルチャーやそこで働くスタッフの方々の価値観やスキル
- 企業や商品サービスの強みと弱み
- 顧客視点のこれまで選ばれてきた理由
- 現在の商品サービスの使われ方、利用シーン
- 顧客視点の競合の存在
など…
挙げ出したらキリがないほど、理解すべきことは多い。 でも、ここを深く理解することで、戦略やクリエイティブの解像度が格段に上がります。
これらを理解せずに広告やクリエイティブをつくることもできますが、正直そんな無駄なことをしたくありません。良くて自己満足で終わるのがオチだから。
そして、ここで大事なのは”私たちだけが理解する”のではなく、クライアントの代表やメンバーも一緒に理解を深めること。 「うちの強みってなんだろう?」「なぜお客さんはうちを選んでくれるんだろう?」「見落としている活用資源はないだろうか?」そう問い直すことで、これまでとは違った視点が必ず生まれます。
必要なのは、”腹落ち”や”納得感”、そして”当事者意識”。
私たち自身もここを重視して理解を深めますが、クライアントの皆さんにもぜひ、一緒に考えていただけたらと思います。
“理解できた”は幻想だ
商いにおいて、「理解できた」と思い込むこと、そして「相手を決めつけること」ほど危ういことはありません。
社会や市場、ブランドも、すべて生き物です。
昨日の常識が、今日も通用するとは限らない。たとえば、数年前まで「機能的に優れていること」が購買に至る要因になっていましたが、今では「環境への配慮」や「エシカルな価値観」を求められるようになってきています。顧客の価値基準は、少しずつ、でも確実に変化しているんです。
それなのに、「うちの顧客はこういうものを求めている」「これが強みだ」と一度決めつけ、常に問い続けることを忘れてしまえばどうなるか。過去の成功体験が足かせになり、新しい可能性に気づけなくなります。
理解とは、一度得たら終わりではなく、常に更新し続けるもの。「もう理解できた」と思った瞬間に、その認識は過去のものになっているかもしれません。
継続してアクションを起こし、定量・定性データを見直し、顧客の声に耳を傾け、競合の動きもチェックする。そうした問い続けること、考え続けること、探究し続けることの小さな積み重ねが、ブランドを強くしていきます。
より良く理解することでブランドの世界観は大きく変わる
ブランドの世界観は、顧客との対話を繰り返し、自分たちの中でも絶えず再解釈を行いながら形作られていくもの。なぜならブランドは企業が作るものではなく、顧客との接点の中で育まれるものだからです。
最後に、理解することは、相手を自分の中に取り込むようなものだと考えています。
相手の物の見方や世界の捉え方を感じ、その本質をつかみ、コミュニケーションの力を最大化させ、ブランドを絶えず変化させていくことです。
だからこそ私たちは、クライアント企業の事業や商品、サービスだけでなく、その背後にある代表者の思い、そしてスタッフ一人ひとりの情熱を深く理解することを大切にしていきたいと考えています。
この記事を書いた人

クリエイティブディレクター
萩原 雅貴
これまで100を超えるブランドのWEB・デザイン・クリエイティブディレクションを担当。固有の価値を伝える現場において、ビジョン・コンセプト開発、事業戦略設計、制作クリエイティブディレクション、執筆まで。ものづくりに情熱を注ぐ人や組織と手を組み、情報ではなく情緒でつなぐことを指針に活動。