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50万円かけても1件もお問い合わせが来ないホームページと、200万円かけて20件のお問い合わせがくるホームページ。あなたなら、どちらを選びますか?
置かれている状況によって答えは分かれるかもしれませんが、少なくともホームページを「24時間365日稼働する、超優秀な営業マンを採用するようなもの」と捉えている方であれば、後者を選ぶのではないでしょうか。
これだけテクノロジーが発達し、ホームページ制作に必要な情報もあふれるほど存在している今、単にホームページを作るだけなら、数十万円で簡単に済ませることもできます。
ただ、安く作れるホームページには、それなりの理由が必ずあります。
その証拠というわけではありませんが、これまで多くの企業経営者の方々からホームページリニューアルについてご相談をいただいてきました。皆さん口をそろえておっしゃるのは、「初めからちゃんと“投資”として作っておけばよかった」という声です。
ホームページはあくまでもツールのひとつにすぎませんが、今の時代、間違いなく“企業の顔”のような存在です。
- ただ企業情報を羅列しているだけ。
- 顧客の知りたい情報ではなく、言いたいことだけを並べている。
- 憧れのブランドのデザインを真似して作っただけで、独自性がない。
まるでバケツに穴が空いているように、せっかくのチャンスがどんどん流れ出てしまっているケースが本当に多いのです。
どれだけ見た目がおしゃれなサイトであっても、行動を引き起こせなければ、それは“無価値”なんです。
今回の記事では、「ホームページから成果を得るために必要な考え方」について掘り下げていきます。
企業にとっての「ホームページの存在意義」を再解釈しよう
ホームページって、どこか「必要だから持っておくもの」になっていませんか?
採用のときに「一応あってよかった」、名刺代わりに「とりあえずURL載せてる」みたいな。
けれど、成長をのぞむ企業にとって、そんな立ち位置じゃもったいないんです。
今後は、ますます機能的な価値や取引条件の面で差別化することが難しくなっていきます。
そのような状況において、考え方やスタンスに共鳴してくれる人と出会えないと、勝負になりません。だからこそ、ホームページの役割は、“情報を届ける”から、「価値観を伝える」「独自性を伝える」へと変わっていく必要があります。
商品やサービスのスペックを説明するだけでは、それらは全く伝わりません。
「なぜそれをやっているのか」「どこを変えたいのか」「誰と未来を描きたいのか」——そういった、ちょっとエモーショナルで、でも一番大事なことを言葉にして、デザインに込めて、構造に落とし込む。
それが、企業が今の時代を生き抜くために、ホームページに求められる絶対条件です。
つまり、ホームページは、「共感を集めるプラットフォーム」であり、「関係性づくりの起点」。
予算があるかないかより前に、この本質的な視点を持てるかどうかが、成果の差を大きく分けていきます。

ホームページにブランディング戦略を落とし込むとは?
ブランディングという言葉を聞くと、多くの人が「ロゴ」「カラー」「トーン&マナー」といった表層の話に引っ張られがちです。
でも、それはブランディングに対するよくある誤解の一つです。
ブランディングとは、「選ばれる理由」を明確にし、それを“全体で一貫して伝える設計”のこと。
そして、そのブランディングの考え方をホームページに落とし込むためには、「コンセプト」が欠かせません。
▼コンセプトについては以前記事にしましたので詳しくは以下の記事をご確認ください。
【コンセプトの価値とは何か】一貫性も、共感も、選ばれる理由も、すべてはコンセプトから始まる。
コンセプトに関する詳しい解説は上記の記事に託すとして、この記事で強くお伝えしておきたいのが、ホームページに対して結果を求めるのであれば、「戦略的に構築されたコンセプト」がページ構成や言葉選び、導線設計にまで一貫して落とし込まれている必要があるということです。
「なんとなく設けた意味のない要素」や「他社のサイトを丸パクリして作ったサイト」では、ユーザーには“なんとなくの違和感”として伝わってしまいます。
加えて、ブランドの「らしさ・独自性」は、コピーや写真、配色だけでつくれるものではありません。
- どこに何を配置するか。
- どんな順番で読ませるか。
- どこで迷わせずに行動を促すか——
など、すべてが独自のコンセプトに基づいている必要があります。
つまり、ブランディング戦略を落とし込むとは、「“他と違うぞ”と思わせる仕掛けをあらゆる箇所に設けること」とも言えます。
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よく「50万円のサイトと200万円のサイトでは、プロセス的にはどこに違いがあるのですか?」というご質問をいただくことがあります。
答えは明確で、成果の出るサイトには、実際にサイトを構築し始める「前工程」に大きな違いがあります。
この前工程とは、先ほど取り上げた「戦略的なコンセプト」を作り込むことや、運用を見据えたサイト企画構築のことです。
実際にサイトデザインに着手する前には、主に以下のようなプロセスを踏みます。
●サイトをつくる目的の整理・再解釈
→事業やブランドの現状と照らし合わせながら、Webサイトに求める役割や目指す成果を明確にします。
●外部環境のリサーチ
→社会の変化、顧客ニーズの動向、競合の強み・弱みなどを分析し、市場における立ち位置と機会を捉えます。
●内部環境のリサーチ
→自社の強みや独自性、事業の背景を整理し、ブランドの核となる価値を言語化します。
●ターゲットとサイトの位置づけの再定義
→誰に向けたサイトか、どんな体験や印象を届けたいかを明らかにし、ブランドの「伝わり方」を再設計。
●ブランド/マーケティングコンセプトの策定
→リサーチで得た気づきをもとに、ブランドの世界観や提供価値を言葉にし、指針として定める。
●集客カテゴリーとSEOキーワードの洗い出し
→想定ユーザーの検索行動やニーズをもとに、集客につながるキーワードとカテゴリーを設定。
●サイト構成の設計と各ページの役割の明確化
→コンセプトに基づき、必要なページを洗い出し、それぞれの目的や役割を定義。
●掲載内容とサイト内のストーリー設計
→各ページの掲載内容を整理し、ユーザーの理解や共感が自然に深まるよう、導線や順序を設計。
●企画や発信が続くサイト仕様の定義
→コンセプトを起点に、新しい企画や更新が継続的に行えるような構造や運用設計を検討。
●ビジュアルアイデンティティの開発
→ブランドの世界観を視覚的に表現するため、ロゴ・配色・フォントなどのデザイン要素を統合的に設計する。
●サイト外の施策も見据えた顧客導線のチューニング
→SNSや広告などの外部施策との連携もふまえ、顧客が自然にサイトへとたどり着き、アクションにつながる導線を整える。
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上記に書いた内容以外にも、さまざまなプロセスを踏みます。基本的には、リサーチが大半です。
ここを飛ばしてしまうと、結局「なんか、まぁ綺麗なサイトだけど、自分には関係ないかな」と思われてしまうサイトになってしまうんです。
▼ブランディングに関する詳細な解説については以下の記事をご確認ください。
未来のブランディングはどう在るべきなのか?歴史を紐解きながら考察してみた
もちろんマーケティングも欠かせない
上記の前工程の内容にはブランディングの視点だけでなく、マーケティング視点も含まれています。
どれだけ芯の通ったブランディングを掲げても、知られなければ存在していないのと同じです。
共感を得たくても、まず「その存在を見つけてもらう」ことが必要で、つまり、マーケティングとブランディングはセットで考えるべき。
どちらかが欠けても、成果にはつながりません。
これは「マーケティング=広告」のような短絡的な話ではありません。
むしろ限られた予算で、どれだけ戦略的に露出の機会を設計できるか。そこが今、挑戦する企業にとってのリアルな課題だと思います。
たとえばSEO。
検索ワードを考え、導線を設計し、ホームページの中身まで連動させる。あるいはSNSや外部メディアとの連携。
これは単なる集客の話ではなく、「適切な文脈で、適切な相手に届く設計」をつくるということです。
ブランディングで“らしさ”を言語化し、マーケティングでその“らしさ”に惹かれる人たちを呼び込む。このセットが機能してこそ、ホームページは「関係性づくりの場」として活きてきます。
大事なのは、見せたいものを見せるのではなく、相手が“見たいと思うものを逆算的に仕掛けていくこと。
だからこそ、どちらか一方では成立しない。
「“共感”と“導線”」「”独自性の可視化”と”顧客価値の伝達”」、両方を設計できてこそ「成果を生むサイト」になっていきます。

構築フェーズは大胆に。運用フェーズは繊細に。
サイト構築の段階において、運用フェーズでもチューニング可能な箇所まで、あれこれ悩んでしまうシーンをよく見かけます。
ただ、まずはサイトを公開してみないことには何も始まりません。
なので、サイト内のあらゆる要素に対して繊細さが求められるのは「運用フェーズ」です。
土台となる戦略がしっかりと落とし込まれているのであれば、細かなHOW(どう伝えるか)の部分は、公開後のユーザーの反応を見ながらチューニングしていく流れが最適だと思っています。
あくまでもホームページは「完成したら終わり」ではなく、「完成してからが本番」です。
だからこそ、構築フェーズと運用フェーズでは、思考のモードを切り替える必要があります。
構築フェーズでは、とにかく“独自の戦略(コンセプト)”を込めることが大事。
何を伝えるべきなのか、誰に届けるか、どう感じてほしいか。その芯があいまいなまま進めると、どうしても無難で、どこかで見たようなサイトになってしまう。
だからこそ、コンセプトに沿った「攻めのデザイン」「ストレートな言葉」「少し尖った導線設計」くらいがちょうどいい。
むしろ、そこを出し切れなければ、誰の心にも残らない。
一方で、公開後の運用フェーズでは視点をガラッと変える必要があります。
ここでは「繊細さ」が必要です。ユーザーの動き、反応、検索ワード、離脱ポイント……すべてのデータに目を凝らして、小さく何度も改善していく。
たとえば、CTA(ボタン)の文言を少し変えるだけで、お問い合わせ率が変わることだってある。
まとめると、
構築では「ユーザーの期待に応えるコンテンツ設計と戦略的なコンセプトの可視化を大胆に」。
運用では「ユーザーの反応に対してより敏感になり、小さな改善行動を繊細に」。(時より反応を見ながら戦略やマーケティングコンセプトも見直す)
ホームページから成果を上げるためには、この考え方は必須といえます。
多くの広告費をかけられない企業こそ、まず受け皿を強くすべし
予算が限られている企業ほど、「広告を打って、知ってもらえさえすればなんとかなる」という幻想に引っ張られやすい。
でも、本当は逆。限られた広告費をどう活かすかは、“受け皿”であるホームページの質にかかっています。
たとえば、仮に月5万円の広告を打って毎月500人がサイトに訪れているのに、問い合わせが1件も来ないとしたら?
それは往々にして、広告が悪いんじゃなくて、サイトの中身が「受け止められていない」状態。
つまり、いくら注いでも、水が漏れていくバケツみたいなものなんです。
そもそも、広告は“入口”にすぎません。
本当に価値を伝えるのは、そこから先の体験設計。つまり、ホームページの中で「この会社いいな」「この人に頼んでみたい」と思ってもらえるかどうかです。
そこに時間とお金をかけられているかで、広告の効果は何倍にも変わります。
広告費が限られている企業こそ、ホームページの言葉、構造、導線を徹底的に磨き込む。
結果として、広告の費用対効果もぐんと上がっていく。一見地味かもしれないですが、これが一番の“攻めの形”です。
「予算がないから、まずサイトを強くする」——それは遠回りに見えて、実は最短ルート。
ホームページ制作にゴールはない
本当に大事なことなので、最後に同じようなことをもう一度書きます。
「ホームページ、ついに公開しました!」
その瞬間は確かに一区切りです。
でも、繰り返しになりますが、それは“終わり”ではなく“始まり”です。
私がこれまで支援させていただいた企業さんでは、ブランド戦略設計、マーケティング戦略設計、WEBサイトのフルリニューアルを実施後、以下のような成果が出ています。
- ただ存在していただけのWEBサイトからの優良なお問い合わせ数が「月1件 → 月20件」
- 長らく伸び悩んでいたECサイトからの売上が1年後にはリピーターが増え、広告を使わずに「月900,000円 → 月2,100,000円」
このような成果が出ているのも、ブランディングやマーケティングの戦略構築に前向きに取り組んでいただき、なおかつ、それを運用に繋げるという視点がプロジェクトメンバーの中にしっかりとあったからだと思っています。
世の中は日々変化し続けています。
お客さまの行動も価値観も、検索トレンドも、競合の打ち手も。今日の「最適」は、明日には「少しズレてる」かもしれない。
その変化に柔軟に呼応して、微調整を繰り返すことができるかどうか。そこが、成果が出るホームページと、出ないホームページの差を決定づけます。
ホームページは「育てていく資産」。
だから変化し続けることを前提に、更新しやすく、手を加えやすく、そして見直しやすく設計することが大事。
ときには、思い切ったリニューアルが必要になることもあります。でもそれも、積み重ねてきた過去があってこそできる決断です。
そういう意味では、ホームページ制作に“完成形”はないのかもしれません。
ゴールがないことをネガティブに捉えるのではなく、“アップデートし続けられる余白”として前向きに捉える。
それが、成果を生み続けるホームページのつくり方です。
この記事を書いた人

クリエイティブディレクター
萩原 雅貴
これまで100を超えるブランドのWEB・デザイン・クリエイティブディレクションを担当。固有の価値を伝える現場において、ビジョン・コンセプト開発、事業戦略設計、制作クリエイティブディレクション、執筆まで。ものづくりに情熱を注ぐ人や組織と手を組み、情報ではなく情緒でつなぐことを指針に活動。ブランドマネージャー1級