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Webブランディングとは?事例と推進手順を段階別に解説


Webブランディングは、企業や商品の愛される理由(独自価値)を基点に、Webサイトを通して一貫したイメージを届け、共感や応援を育てる活動です。

事例から共通する型を取り出し、診断から運用までの段階に沿って進めると、自社での次の一歩が見えてきます。


この記事の要点は、次の4つです。

  • ブランディングは活動、その積み重ねの先にできる無形資産がブランド。
  • 国内の企業・大学・公的機関の事例には、戦略・体系・表現・運用という共通の型が見える。
  • 推進手順は診断・戦略・設計・実装・運用の5段階で捉えると整理できる。
  • 内製と外注は目的とKPIから判断し、経営層の関与が成否を分ける。


Webブランディングの定義と目的

Webブランディングの話に入る前に、まず「ブランディング」と「ブランド」という言葉の関係を整理します。
この2つを区別しておくと、何を目指して、日々何をするのかが明確になります。


ブランディングの定義とWebでの役割

ブランディングは「活動」、ブランドは「資産」です。
この2つを区別すると、全体の流れが見えやすくなります。

ブランディングとは、企業や商品の愛される理由(独自価値)を基点に、一貫したイメージをステークホルダーと共有し、共感や応援を生むための戦略や活動です。


ブランドは、その活動の積み重ねによって築かれる資産です。
特定のものではなく、印象・連想・感情の集合体として、人々の心の中・頭の中に生まれます。

Webサイトは、その集合体を形づくる場になります。
独自価値を伝える表現の場として、ブランドを育てる中心的な舞台と捉えていただきたいです。

また、ブランドはロゴやフォントだけでなく、語られる物語や積み重ねてきた取り組みの総体でもあります。


指名検索と相談増加につながる仕組み

まず、Webで一貫して発信し続けると、相談や指名検索の増加につながります。

ただ、指名検索や相談が増えるまでには、いくつかの段階があります。
まず名前を知ってもらう接点があり、次にどんな会社なのかが伝わり、最後に必要が生じたときに名前を思い出してもらう。


Webでの発信の一貫性が効くのは、2段階目です。
広告で見たとき、記事を読んだとき、サイトを訪れたとき。

どこで接触しても同じ印象であれば、バラバラだった接点が「あの会社」という一つの認識にまとまっていきます。逆に、ページごとに見せ方や語り口が違うと、接触の回数が増えても印象が定まらず、名前と結びつきません。


つまり、一貫性は接点を増やす施策そのものではなく、増やした接点を無駄にしないための条件です。発信量と一貫性の両方がそろって、はじめて指名検索や相談につながっていきます。


Webブランディングの全体像と前提

大前提になるのですが、Webブランディングは単発のサイト制作ではなく、戦略から日々の運用までの積み重ねで成り立ちます。
まず全体の構成を確認します。


戦略・体系・表現・運用の4層

Webブランディングは、戦略・体系・表現・運用という4層で成り立ちます。それぞれの役割を整理しておくと、全体像がつかみやすくなります。


一つ目の戦略は、誰の共感を得たいのか、どんな価値を軸にするのかを定める層です。
ターゲットとなる相手を決め、その人たちに何を感じてほしいのかを言葉にします。

ここで決まるのは、ブランドコンセプトやメッセージの軸、伝えるべき独自価値といった、以降のすべての判断のよりどころになるものです。


二つ目のブランド体系は、複数のサイトや部門をまたぐ関係を整理する層です。
コーポレートサイト、採用サイト、ECサイト、事業部ごとのサイト。組織が大きくなるほどWebの接点は増えていきますが、それぞれが個別に運営されると、名前もデザインも語り口もばらばらになります。

どのサイトが親でどれが子なのか、ロゴや社名の見せ方をどう揃えるのか、新しいサイトを作るときは何を引き継ぐのか。この関係を先に決めておく層です。


三つ目の表現ルールは、「らしさ」をどう伝えるかを具体的に定める層です。
ロゴの使い方、配色、フォント、写真のトーン、文章の言葉づかい、ボタンや見出しのデザイン。

誰が制作しても同じ判断ができるよう、基準を形にします。Science Tokyoのデザインシステムでは、Webスタイルガイドとしてデザインデータやユーザーインターフェース(UI)コンポーネントをまとめ、表現方法と伝え方を整理しています。(参照*1)。


四つ目の運用は、公開後にブランドを積み上げていく層です。

ここまでの3層は、いわば準備です。何を伝えるかを決め、サイト間の関係を整理し、表現の基準をつくる。

ただ、その時点ではまだ誰にも何も届いていません。実際に人が訪れ、記事を読み、会社の名前を覚えていくのは、公開してからの日々の運用の中です。

記事やニュースを継続的に発信して情報を増やし、アクセスの数値や問い合わせの内容を見ながら改善を重ね、事業の変化に合わせてルール自体も見直していく。

ブランドが活動の積み重ねでできる資産である以上、その資産が増えていくのは運用の段階だけです。だからこそ、4層の中で最も長く続き、最も成果を左右するのが運用になります。


ステークホルダーと発信エコシステム

Webでの発信は、複数のサイトやチャネルをまたいで設計することが大切です。

組織が複数のWebサイトを持つと、個別に運営した結果として表現や情報がバラつきやすくなります。Webガバナンスは、サイト群全体で情報資産を活用し、全体最適を進める取り組みとして整理されています(参照*1)。

企業でも、コーポレートサイト・ECサイト・採用ページ・SNSと接点が増えるほど、共通の見た目と語り口で届けることが、相手にすぐ認識してもらううえで重要になります。

社内外のステークホルダーは、複数のサイトやチャネルを行き来しながらブランドに触れます。つまり、点ではなく面で発信をそろえ、組織を横断するエコシステムとして設計することが、Webブランディングの核心です。


Webブランディングの事例に学ぶ論点

国内の中小企業と、サイト群全体でブランドを運用する組織の事例から、自社で確認すべき論点を取り出します。


中小企業のブランディング事例

まず、独自価値の言語化から始めた国内中小企業の事例です。

中小企業庁の事例集によると、北海道の環境大善株式会社は、事業承継をきっかけに徹底的な自社分析を行い、ブランドコンセプトの明確化、社名変更、シンボルマークとパッケージデザインの開発に取り組みました。
結果、海外5カ国との取引や利益率の向上につながっています(参照*2)。


同じ事例集では、奈良県の老舗編針メーカーである近畿編針株式会社が、社員全員でブランドコンセプトを検討して新ブランドのネーミングとロゴを開発し、売上を大きく伸ばした事例も紹介されています(参照*2)。


ほかにも、富山県のオーガニック化粧品企業が、クラウドファンディングとSNSでブランドの世界観を発信し、国内外への販路開拓に取り組む方針です(参照*2)。

いずれも、独自価値の掘り起こしを起点に、ネーミング・デザイン・WEB発信を連動させた事例です。


Webでブランドを育てた企業・組織の事例

次に、Webを起点にブランドを育てた事例です。

J-Net21の取組事例によると、大阪市の工具販売会社である株式会社大都は、2002年に楽天市場への出店からネット通販を始めました。

取扱点数を1万8,000点から10万点へ拡大するとともに、メーカーとの受発注をFAXからウェブシステムに切り替えています。その翌年からは、対前年同月比200%という成長の勢いが2年間ほど続きました。

DIY用品ブランド「DIY FACTORY」を育て、実店舗の展開にもつながっています(参照*3)。


組織の例では、IPAが英語名称をInnovation Platform Agency, Japanへ変更し、新しいロゴとブランドアイデンティティを定めました。

自らを、多様な主体が価値を共創できる社会的な接続基盤と位置づけ、その方針をブランドで表現しています(参照*4)。名称とロゴという最も基本的な要素から定義し直し、それをサイトをはじめとする各接点へ反映していく進め方です。

Webサイトの改修だけを切り出して考えるのではなく、何者であるかを定義するところから始め、それを発信の形にしていく。事例に共通しているのは、この順番です。(参照*4)。


事例から抽出できる共通要素

事例に共通するのは、独自価値の言語化を起点に、体系・表現・運用へと連動させた進め方です。

戦略で誰にどう感じてほしいかを決め、体系でサイト群と情報資産を整え、表現ルールで「らしさ」を具体化し、運用でそれを守り続けます。


Science Tokyoの整理では、Webガバナンスは一律のルールを全サイトに適用するのではなく、サイトごとの役割や目的に応じた適用範囲を決め、段階的に実行していくものと位置づけられています(参照*1)。

つまり、定義・体系・ガイド・運用の四つを連動させ、できる範囲から着実に広げていくことが、Webブランディングを定着させる近道です。


Webブランディングの段階別推進手順

ここからは、診断・戦略・設計・実装・運用の5段階に沿って、事例で見た型を自社で進める手順に落とし込みます。


段階1 現状診断と課題整理

最初の段階は、現在地を把握することです。

コーポレートサイトや採用サイト、SNSなど自社が持つ接点をすべて洗い出し、独自価値に沿った内容になっているか、表現や情報の重複、サイト間で矛盾している記述を確認します。


あわせて、数値からも実態を見ます。どの経路から人が来ているのか(指名検索、一般的なキーワード検索、SNS、広告、直接流入)、サイトに入った人がどのページを見て回っているのか、そのページはどれだけ読み込まれているのか。そして、問い合わせや応募が何件あり、その中身はどうか。

なかでも、会社名で検索された回数、複数ページを回遊しているかどうか、問い合わせが価格の相談なのか指名の相談なのか。
この3つは、ブランドが現在どう認識されているかを直接的に示します。


このとき見落としがちなのが、社内の認識と、外からの見え方のズレです。

自社の強みの説明が部門ごとに食い違っていないか、実際に顧客や候補者からどう見えているか。
ここを確認しておくと、あるべき姿と現状のギャップが具体的に見えてきます。


そのうえで、あるべき姿と現状のギャップを見える化します。

IPAのデジタルトランスフォーメーション(DX)推進指標では、自己診断への回答を通じて現状とのギャップを把握し、関係者間で認識をそろえ、方向性を共有した行動につなげることが期待されます(参照*5)。

この考え方は、ブランディング推進にも応用できます。
診断結果を共通言語として活用することで、次の戦略段階に進みやすくなります。

診断は課題を列挙するためではなく、関係者の目線をそろえる対話の材料として機能します。


段階2 ブランド戦略と体系設計

現在地が把握できたら、進む方向を決めます。

独自価値を言葉にし、誰に届けたいのか、その人にどう感じてほしいかを定めます。

顧客だけでなく、採用候補者や取引先、社員といった相手も含めて整理します。

先に触れた近畿編針株式会社のように、社員全員でブランドコンセプトを検討する進め方は、決めた言葉を全員のものにするうえで有効です。


段階3 表現ルールとサイト設計

戦略が固まったら、目に見える形に落とし込みます。

Science TokyoのWebスタイルガイドは、Webサイトの立ち上げや運用に使う具体的なデザインデータやUIコンポーネントで構成されています。「らしさ」やその表現方法、コミュニケーション方法をまとめたものです(参照*1)。

この段階では、サイト構造・ページの型・文章のトーン・色や写真の選び方を一つのガイドに整理します。ガイドは制作会社にも社内担当者にも同じ判断基準を提供する道具になります。

表現ルールは制約ではなく、迷いを減らし意思決定を早めるための共通言語です。


段階4 実装とコンテンツ整備

決めた内容を、実際のサイトに反映していく段階です。

作業は大きく2つに分かれます。

一つはテンプレートやコンポーネントの構築で、ここを丁寧に整えておくと、公開後の更新やページ追加が楽になります。もう一つがコンテンツで、既存ページの移行と新規記事の制作を並行して進めていきます。


このとき、サイトの見た目だけを整えても十分ではありません。

先に触れた株式会社大都は、ネット通販を始めるにあたって取扱品数を大きく増やし、メーカーとの受発注をFAXからウェブシステムに切り替えました。表に見える部分と、それを支える裏側の仕組み。両方が揃って、日々の運用に耐えるサイトになります。


あわせて準備しておきたいのが、社内向けの説明会や利用資料です。
ルールを決めても、実際に更新する人に伝わっていなければ守られません。

公開はゴールではなく、運用開始の合図。
この段階の設計が、その後の運用のしやすさを大きく左右します。


段階5 運用ガバナンスと改善

公開後は、ブランドを育て続けるための仕組みを回していきます。

まず必要なのが、発信を続けられる体制です。誰が何を更新するのか、新しいページを追加するときは何を基準に判断するのか。

Science Tokyoでは、複数のWebサイトを横断するサイト群全体の方針を策定し、各サイトからの発信を共通の情報資産として管理・運用するメディアプラットフォームを運用しています(参照*1)。

個別のサイトごとに運営するのではなく、全体を一つの資産として扱う考え方です。


そのうえで、育っているかどうかを数値で確認します。
アクセス数だけでなく、会社名で検索された回数、サイト内をどれだけ回遊しているか、問い合わせの中身が価格の相談から指名の相談へ変わっているか。こうした指標を軸に据えると、次に何を改善すべきかが見えてきます。

改善は、必ずしも運用の中だけで完結しません。
表現ルールに無理があれば段階3に、そもそも誰に何を伝えるかがぶれているなら段階2に戻ります。

5段階を行き来しながら見直しを重ねることで、ブランドは着実に育っていきます。


内製・外注の判断基準と社内巻き込み

手順が見えたら、次は体制の整理です。内製と外注の線引きと、経営層の関与を整理します。


内製と外注の判断軸

内製と外注は、役割で切り分けて考えるのが基本です。

建設分野のICT活用工事に関する調査では、起工測量・3次元設計データ作成・出来形管理の三つの工程を「全てを自社」で行う受注者は11%にとどまっています。

「全てを外注」や「一部を自社で実施」が大半を占めており、ICTに取り組んでいる企業でも内製化が進んでいない実態が確認されました(参照*7)。

同じ調査では、内製化を進めた企業から「最初は外注していたが、会社に技術が残らない。
内製化することで社内の技術力を高めることができる」という声も紹介されています(参照*7)。


この視点はWeb運用にも当てはまります。
外注に頼り切ると、社内に判断軸が育たないまま時間だけが過ぎるリスクがあります。戦略の方向性や表現の意思決定は内製寄りに置き、専門的な制作作業は外注寄りに任せるという役割分担が、現実的な落としどころです。


体制設計と経営層の巻き込み

体制を設計するうえで、経営層の関与は欠かせません。

IPAのDX推進指標では、大企業と中小企業の平均値の差が大きい経営視点の上位5指標として、戦略とロードマップ、推進・サポート体制、投資意思決定・予算配分、推進体制、人材育成・確保が挙げられています(参照*5)。


IPAのコミュニティ資料では、DX銘柄とDXセレクションに選定された111社の事例を出発点に、DXも他の組織改革と同様に「戦略と目標」が重要だと説明されています(参照*8)。


Webブランディングの推進体制も、戦略・目標・KPI・人材育成をセットで設計することが核になります。

経営層が戦略と目標を自分の言葉で語れる状態にすることが、事業部を自然に巻き込む最短ルートです。


失敗しやすい落とし穴と対処

Webブランディングが途中で止まる原因は、多くの場合、制作以外のところにあります。


担当者だけの取り組みになっている

経営層の関与が薄いまま進めると、判断が必要な場面で決まらず、他業務が忙しくなった途端に止まります。ブランドの方向性は事業の方向性そのものなので、担当者の裁量では決められません。

IPAのDX推進指標では、全企業の現在値と目標値の差が大きい項目として「マインドセット・企業文化」と「IT投資の評価」が挙げられています(参照*5)。


組織で新しい取り組みを進めるとき、最も差が出るのは仕組みではなく、その手前にある考え方や文化だということです。私自身も、制度や仕組みより先に文化が変わらなければ、取り組みは形骸化しやすいと考えています。

だからこそ、最初の段階から経営層を巻き込み、目的と目標を自分の言葉で語れる状態にしておくことが必要です。


公開後の体制を決めていない

制作の予算と期間は確保しても、公開後に誰が何を更新するのかを決めていないケースは多くあります。

結果、更新が止まり、情報が古いままのサイトになります。運用の担当と時間を、制作の計画と同時に決めておきます。


ルールが現場に伝わっていない

表現ルールを作っても、実際に更新する人が知らなければ守られません。

経済産業省は、中堅・中小企業向けの手引きを、「DXの進め方」「DXの成功のポイント」を中心に内容を簡潔にし、イラストも使ってわかりやすい形へ刷新しました(参照*6)。

情報を整理して届けても、受け取る側が理解できる形になっていなければ動けない、という前提に立った改訂です。

社内のガイドラインも同じで、渡すだけでは足りません。
説明の場を持つこと。そして、迷ったときに聞ける相手を決めておくことです。


成果の見方が決まっていない

アクセス数だけを見ていると、短期の増減に一喜一憂して、方向性がぶれます。
ブランドが育っているかを見る指標をあらかじめ決めておけば、腰を据えて続けられます。

いずれも、制作の前に決めておけば防げるものばかりです。

サイトをどう作るかと同じくらい、公開後をどう続けるかを最初に設計しておくことが、長く続けるための現実的な手段になります。


おわりに

ブランディングは活動であり、ブランドはその積み重ねで育つ資産です。
この捉え方を持つだけで、日々の運用における判断はぐっとシンプルになります。

事例に共通していたのは、戦略・体系・表現・運用の四つが連動し、担当組織の役割が明確であることでした。

まず取り組むべきは、自社の現在地を診断し、独自価値を言葉にすることです。
そこが、すべての起点になります。

小さな一歩でも、連動させながら続けていけば、指名検索や相談の増加は自然とついてきます。
こうして育てたブランドは、目の前の成果にとどまらず、次の世代へ引き継がれる会社の資産としてのこっていきます。

愛され続けるブランドの育成は、今日の一歩から始めてみてください。


参照


この記事を書いた人

クリエイティブディレクター

萩原 雅貴

これまで100を超えるブランドのWEB・デザイン・クリエイティブディレクションを担当。固有の価値を伝える現場において、ビジョン・コンセプト開発、事業戦略設計、制作クリエイティブディレクション、執筆まで。ものづくりに情熱を注ぐ人や組織と手を組み、情報ではなく情緒でつなぐことを指針に活動。ブランドマネージャー1級