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ブランディングのプロジェクトで成果が出ない原因の多くは、施策そのものではなく、プロジェクト設計の弱さにあると考えています。
これまで多くの案件に関わる中で、想像以上の成果を出しているプロジェクトには、例外なく優れたプロジェクトマネジメントがありました。
本記事では、ブランディングを運用できる戦略にするためにプロジェクトマネージャーがなぜ必要かを整理し、リコルクが大切にするプロジェクトマネージャーのスタンスについても触れたいと思います。
なぜ「ブランディングの進め方」にプロジェクトマネジメントが必要なのか
ブランディングという言葉は、デザインやキャッチコピー、広告施策を連想しやすいと思います。
一方で、事業成果につなげるには、それ以前に「意図的に実行するための判断軸」と「意思決定が進む仕組み」が必要です。
たとえば、そのプロジェクトにおける
- ゴール設定
- 役割分担
- 予算配分
- 承認経路
- タスクの優先順位
これらを先に決め、運用し、改善を高速で回す。
そうしたプロジェクトマネジメントがあって初めて、施策は意味のある形で積み上がっていきます。
たとえば次の状態は、進んでいるように見えて成果が最小化していく典型だと思っています。
①承認が詰まる
→最終確認者と判断基準が決まっていないと、確認と修正が無駄に増えてしまう。その結果、尖った判断ができず、最大公約数の安全策に寄っていく。
②やることが増え続ける
→施策の取捨選択ができず「ついでにこれも」が増えると、会議と調整が増えてしまう。その結果、現場の更新が止まり、機会損失が起きる。
③成果の基準が曖昧
→何を改善するのか(問い合わせ、指名、採用、単価、継続など)が決まらないと、優先順位が定まらない。その結果、場当たり的な施策が増え、施策が最適化されない。
計画とマネジメントを疎かにすると、予算超過・便益過小が起きやすくなります。
また、納期遅延も増え、遅延が起きるほど確認・調整・説明が増えるため、管理コストが膨らむ点も見逃せません!
「事業成果につながるブランディング」とは何か
事業成果につながるブランディングは、デザインを整えることでも、広告施策を増やすことでもありません。
経営として「何を変えるのか」を先に決め、その変化が起きるように、顧客との接点で出す情報と社内の運用方針を揃えることです。
なので、最初に決めるべきは、成果の定義を明確にすることです。
(※以下は成果の例で、業種や目的によって変わります)
- 売上の成果:指名相談の増加、成約率、平均単価、継続率。
- マーケの成果:問い合わせ数、指名検索、資料請求、再訪。
- 採用の成果:応募の質、面接通過率、内定承諾率、定着率。
- 組織の成果:説明の統一、提案の再現性、教育コストの低下、エンゲージメントの改善。
たとえば上記のうち、まずは「どれを最優先に取り組むか」を一つ決め、そして次に、その成果を測る指標と、対象範囲(どの接点まで直すか)を決める。
ブランディングは、魅せ方のうんぬんの前に、こうしたプロジェクトの全体設計が明確になって初めて、運用にフォーカスできるようになります。
プロジェクトマネジメント≠進行管理
ここで改めて整理しておきたいのが、プロジェクトマネージャーは単なる進行管理役ではないということです。
この点はよく誤解されがちなのですが、「プロジェクトマネージャー=進行管理役」という誤解が、思うような成果が出ないボトルネックになっていると感じています。
たとえばWeb制作ひとつを切り取っても、プロジェクトマネージャーが不在でディレクターがプロジェクトマネージャーも兼ねるケースは珍しくありません。
ただ、ディレクターとプロジェクトマネージャーは役割が異なります。
ディレクターが成果物のクオリティを担保する人だとすれば、
プロジェクトマネージャーは、成功条件を満たすために、関係者・承認・予算・納期・範囲・リスクを管理して、プロジェクトやチーム内のズレを早い段階で止めつつ、「成果を出すための必要条件の整備」を行う人です。
つまり、付加価値が生まれやすい状態を作り出す役目を担っていると言えます。
同じ人物の中でこの役割が混ざると、ディレクターは成果物の品質担保に意識と時間を取られ、本来プロジェクトマネージャーが整えるべき「成果を出すための必要条件の整備」が後回しになってしまいます。
そしてプロジェクトマネージャーが実際に行っている業務内容は、たとえば次のとおりです。
- ヒアリングを行い、情報を整理する
- 意思決定に必要な情報を揃え、優先順位の合意を取る
- 承認の手順(誰が・何を見て・いつ決めるか)を設計する
- プロジェクトゴールを言語化する
- 予算を設定し、予算超過を防ぐために管理する
- スケジュールを設計し、進捗を管理する
- 本プロジェクトにおけるルールを共有し、関係者間のズレを減らす
- リスクを洗い出し、手戻りを前倒しで潰す
- 運用オペレーションを構築し、スムーズにPDCAを回せる状態をつくる
- 数値の見方を揃え、改善の優先順位を決める
- 目標の見直しを行う。(そもそもその目標が、ゴールに沿っているのかを定期的に見直す)
などなど…
書き出してみると想像以上に領域が広いと感じると思います。
だからこそ、この領域に責任を持つ人材がいるからこそ、他のメンバーが自分の領域に専念できる状態が作られ、それぞれの領域に責任を持てるようになると思っています。
プロジェクトマネージャーはコストか?投資か?
プロジェクトマネージャーが必要かどうかを考えるとき、つい「人を1人増やすかどうか」という話になりがちです。
でも実際は、そこが論点ではない気がしています。
プロジェクトマネージャーがいない、あるいは兼任で十分に機能していない状態だと、予算が膨らんだり、納期が遅れたり、メンバーのパフォーマンスが十分に発揮されなかったりすることが起きやすい。
つまりそうなると、目に見える制作費とは別に、見えない手間や機会損失が積み上がっていきます。
なので、プロジェクトマネージャーの費用は「人件費が増える」という話というより、そうしたロスを抑えて、プロジェクトが着実に前に進み、成功の確率を上げるための投資とも言えるんです。
リコルクが大切にしている、PMのスタンス
このようにプロジェクトマネージャーの重要性を理解しているからこそ、
リコルクでは各プロジェクトにプロジェクトマネージャーを設置する前提で取り組んでいます。
(もちろんこれを望まない方もいらっちゃるので、お見積もりの項目もディレクションと分けています。)
そして、プロジェクトに参画する際は、次の8点を大切にしています。
- 良いチームを用意する
→成果に必要な役割を先に決める。足りない役割があるなら、社内外から補って穴を作らない(チームメンバーのアサインから入る) - 「なぜ?」を問い続ける
→議論がズレたら、目的・優先順位・対象顧客に戻して整理し直す。話題が増えても“今やる理由”がないものは止める - 小さく作って積み重ねる
→最初から全部作らない。最小の範囲でまず出し、反応と数字を見て、次にどこへ投資するか判断する - ゆっくり考え、すぐ動く
→実行前に「決めるべきこと」と「確認すべきこと」を先に詰める。後から戻ると高くつく工程ほど、先に判断材料を揃える - 外の情報を取り入れる
→過去事例や類似プロジェクトの数字・進め方を参照し、予算や期間の見積もり根拠を作る。想定リスクも事前に洗い出す - 条件が揃わないなら、進め方を再設計する
→人材・予算・期限・意思決定体制が不足しているなら、範囲を絞る/順番を変える/成果の置き方を変えるなど、成立する形に組み替える - 強固な人間関係を築く
→問題が起きた時にすぐ相談・調整できる状態を作る。関係者の認識合わせを早めに行い、後工程での衝突を減らす - 最大のリスクは自分であることを自覚する
→思い込みで判断しない。対話を避けない。目的を見失ったら立ち止まって修正する。必要な変更を先送りしない
リコルクのプロジェクトマネージャーは、この8つを前提にプロジェクトを設計・運用します。
だからブランディングが「作って終わり」になりにくく、事業成果に結びつく形で積み上がっていきます。
▼以下の記事では、ブランディングの現場におけるプロジェクトマネジメントについて、さらに詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
リブランディング実施後から、さらにブランド力強化を加速させるための方法
最後に
この記事を書こうと思った理由を正直に言うと、世の中「無駄に終わるプロジェクト」が多いと感じたからです。
とりあえずやってみる姿勢はもちろん大事。
でも、それが何につながり、次にどう活かすのかまで設計しないと、成果が良くても悪くても再現性が残りません。
仮説と目標に照らして要因を特定し、次の改善につなげて初めて、プロジェクトは資産になります。
プロジェクトマネージャーがいると、確かに一番初めに提示される初期コストは増えるかもしれません。
ただ、途中の手戻りと停滞が減り、結果として投資対効果が良くなるケースが本当に多いんです。
最後に、経営者はプロジェクトマネージャーに何を渡せばいいのか。
ポイントは4つです。
(※これは社内にPMをおく場合も同様です)
- 優先する成果を一つ決めること(売上/問い合わせ/採用など)。
- 最終的に決める人を一人置くこと(会議参加者ではなく決裁者)。
- 変えていい範囲を決めること(どこまでやるか、どこから先は確認するか。ここが予算と納期に直結します)。
- 予算の使い方の方針を決めること(何に投資し、何を削るか。品質・速度・範囲のうち、何を守るか)。
PMはこの前提をもとに、役割、予算とスケジュール、運用ルールを成立する形に組み上げます。
「任せる」とは丸投げではなく、成果が出る条件を先に渡すこと。
リコルクはその前提で、ブランディングを“作って終わり”にしないプロジェクト設計を行います。
この記事を書いた人

クリエイティブディレクター
萩原 雅貴
これまで100を超えるブランドのWEB・デザイン・クリエイティブディレクションを担当。固有の価値を伝える現場において、ビジョン・コンセプト開発、事業戦略設計、制作クリエイティブディレクション、執筆まで。ものづくりに情熱を注ぐ人や組織と手を組み、情報ではなく情緒でつなぐことを指針に活動。ブランドマネージャー1級