
2024年10月から、ナノヒューマンプロモーション(通称 nano.)様と採用ブランディングのプロジェクトを進めています。
スタートから約3ヶ月。
戦略設計とリサーチ、ディスカッションを重ね、現在は設計した戦略を具体的なアウトプットへと落とし込むフェーズに入りました。
ありがたいことに、プロジェクトは順調に進んでいます。
議論の解像度も上がり、チーム内での認識も少しずつ揃ってきました。
だからこそ今回は、先方の了承をいただいた上で、このプロジェクトの裏側を連載という形で書いていこうと思います。
この連載でお伝えしたいのは、いわゆる「成功事例」ではありません。
どんな議論を重ね、どこで迷い、どのタイミングで覚悟を決めたのか。
ブランディングや戦略設計の現場で、実際に起きているリアルなプロセスです。
vol.1となる今回のテーマは、「戦略とやり切る覚悟の関係性」。
どれだけロジックが整った戦略でも、なぜ機能しないケースがあるのか。
そして、戦略を“絵に描いた餅”で終わらせないために、何が必要なのか。
ナノヒューマンプロモーション様との取り組みを通して、改めて強く感じたことを、できるだけ具体的にお伝えしていきます。

戦略自体には価値はない
これまで多くの企業とブランディングやマーケティングの戦略設計に携わってきましたが、常に感じていることがあります。
それは、「戦略そのものには、まだ価値がない」ということ。
ここで言う戦略とは、「戦を略す」と書く通り、無駄な戦いを避け、限られた資源をどこに集中させるかを決めるための設計図です。
どこで戦い、どこを捨てるのか。その判断を明確にするのが戦略の役割です。
ただ、どれだけ精度の高い戦略を描いても、それが実行されなければ結果にはつながりません。
戦略が価値を持つのは、運用の現場で使われ続けたときだけです。
一方で、行動していればいいかというと、そうでもない。
戦略とズレたアクションをどれだけ積み重ねても、成果は出にくいし、現場は疲弊していきます。
今回のナノヒューマンプロモーション様のプロジェクトでも、約3ヶ月間、毎週のようにディスカッションとリサーチを重ねて採用ブランディング戦略を設計しました。
けれど、この戦略が今後の運用フェーズで軽く扱われてしまえば、その時間は簡単に意味を失ってしまいます。
現在は、設計した戦略をWEBサイトへと落とし込む段階に入っていますが、今でも何度も戦略設計書を読み返しています。
「この表現は戦略に沿っているか」「コアバリューを一番伝えやすい形になっているか」。
確認というより、判断の軸を毎回そこに戻している感覚に近いです。
戦略は、作った時点で価値が生まれるものではありません。
落とし込みや運用の中で、何度も立ち返り、守り続けて初めて意味を持つ。
そして、その状態をつくるためには、次に書く「決めきる・やりきる覚悟」が欠かせないと感じています。
「やらないこと」が増えるからこそ重たい決断。
戦略設計のフェーズでは、あるところで必ず立ち止まる瞬間が来ます。
「候補は出た。あとは、どれか一つに決めないと進めない」という場面です。
- 採用市場に向けて、職場としての強みは何か。
- どこなら無理なく勝負できるのか。
- 逆に、今は手を出さない方がいい領域はどこか。
こうした論点を一つずつ整理しながら、方向性を絞っていきます。
この「絞る」という決断が重たい理由は、その瞬間に「やらないこと」が一気に増えるからです。
無駄に可能性を残したままにするのではなく、
選ばなかった選択肢に対して、きちんと線を引く必要がある。
その決断があるからこそ、次にやるべきことが一気に具体になります。
誰にでもいい顔をしようとして施策を広げなくて済む。
言葉や表現の判断基準も揃っていく。
運用の現場で迷いが減るのは、決めるべきところで決めているからなんです。
もちろん、途中で不安になることもあります。
「本当にこの判断で良かったのか」と立ち止まりたくなる瞬間も出てくると思います。
それでも、最初に決めた方向を信じて、徹底してやり切る。
ナノヒューマンプロモーション様も、その判断を毎回言葉にし、方向性を絞り、プロジェクトを前に進めてきました。
(本当に腹の括り方がすごい)
だからこそ、戦略が途中で揺らがず、次のアウトプットへとつながっていると感じています。
▼実際に作成した採用ブランディング戦略設計シート

「自分=ブランド」という個に振り切ったコンセプト
ナノヒューマンプロモーション様の特徴は、議論の出発点が最初から「個」にあったことです。
会社の紹介より先に、
- この環境で、個人がどう伸びるのか
- どんな仕事経験を積めるのか
- その結果、どんな力が身につくのか
という話が自然と中心にありました。
しかもそれが、採用向けに整えた言葉ではなく、現場のメンバーから出てくる実感のこもった言葉だった。
ここは、ナノヒューマンプロモーション様の大きな特徴だと感じました。
そこで今回、採用のコンセプトを「自分=ブランド」に置いています。
会社の看板に頼るのではなく、一人ひとりが自分の仕事で価値をつくり、その積み重ねで信頼を得ていく。
どんな案件に向き合い、どんな難易度の仕事を任され、どんなスピードで成長していくのか。
そうした日々の仕事そのものを、採用メッセージの中心に据えました。
競合を見渡しても、ここまで「個」に焦点を当てた打ち出しは多くありません。
ただ、これは奇をてらった表現ではなく、ナノヒューマンプロモーション様がこれまで大切にしてきた考え方を、そのまま採用文脈に翻訳したものです。
このコンセプトが成立しているのは、会社として「全員に好かれなくていい」という前提を共有できているからだと思います。
誰にでも当てはまる言葉ではなく、この環境で本気で成長したい人に向けて正直に伝える。
その姿勢があるからこそ、「自分=ブランド」というメッセージにも無理がなく、運用の現場でも使える形になっています。

戦略を「チームの言葉」にする
繰り返しになりますが、戦略やコンセプトは、設計しただけではまだ不十分です。
それが現場で同じ判断を生む状態になって、初めて意味を持ちます。
今回のプロジェクトでも、戦略が固まり次第、段階的に社内共有を進めてきました。
まずは経営・幹部層。
次に、実際に発信や運用を担う広報・SNSチーム。
立場や役割が違えば、判断の場面も違う。
だから「同じ資料を渡せば伝わる」と考えていけないと思っています。
共有会で一番大事にしているのは、「何をやるか」を揃えることではなく、「どう判断するか」を揃えること。
なぜこの戦略なのか。
なぜこの表現を選び、別の選択肢を捨てたのか。
その背景まで含めて共有しないと、運用フェーズで判断が再現されません。
逆に言えば、この判断軸さえ揃っていれば、細かい表現や運用は現場で自走できる。
ナノヒューマンプロモーション様のチームは、この共有の時間をとても大切にされています。
表面的に理解するのではなく、「自分たちの判断として使えるか」を確認しながら、言葉を揃えていく。
その姿勢があるからこそ、戦略が途中で形骸化せず、運用までつながっていると感じています。
nano.プロジェクトvol.1では、そのことを改めて実感しました。
これからもナノヒューマンプロモーション様と伴走しながら、決めた戦略を、正解にするところまで向き合っていきたいと思います。
この記事を書いた人

クリエイティブディレクター
萩原 雅貴
これまで100を超えるブランドのWEB・デザイン・クリエイティブディレクションを担当。固有の価値を伝える現場において、ビジョン・コンセプト開発、事業戦略設計、制作クリエイティブディレクション、執筆まで。ものづくりに情熱を注ぐ人や組織と手を組み、情報ではなく情緒でつなぐことを指針に活動。ブランドマネージャー1級