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マーケティングの世界では、「新規顧客の獲得には、リピーターを維持するコストの5倍かかる」とよく言われます。
これは実務の現場でも体感できる、現実的な法則です。
広告費をかけ、SNSでバズらせ、キャンペーンを打つ。
こうした新規獲得施策はすべてコストが高くつきます。
しかも、その効果は一時的なことが多く、長期的な利益にはつながりにくい。
一方、すでに自社の商品やサービスを購入し、体験してくれた顧客は、リピートに対する心理的ハードルが低い。
ブランドに対して信頼を持っていれば、再購入の動機付けは小さなきっかけで済みます。
つまり、同じコストをかけるなら、新規よりも既存顧客の継続に投資した方が、遥かに費用対効果が高いんです。
現代の日本は人口が減少し、今後市場そのものが縮小していくのは明らか。
その中で、常に新規を取り続けるモデルでは、やがて限界が来ます。
だからこそ、いま注力すべきは「顧客との関係性を育てる」こと。
商品設計の段階から、どうすれば“繰り返し買いたくなるか”を考えておくことが重要です。
「迷い」を与えてしまうとリピートされない
商品サービス自体には満足されているのに、リピートが起きない理由の多くは、「次はどうすればいいのか」が曖昧で、行動にブレーキがかかってしまうことが多いです。
これは案外見落とされがちな点で、
「その業態に合ったメニュー(カフェならコーヒー、デザイン会社ならチラシ制作など)を揃えておけば、また必要になった際に利用してくれるだろう。」と思われている方が大半。
たとえばカフェ。
常連になりかけているお客さんが、Instagramを見ても「季節限定メニューがあるのかないのか、そしてあったとしても、いつまでなのか分からない」
他にも「混雑時間が読めない」「最新情報をどこで受け取られるのかわからない」など。
このちょっとした情報の不明確さが「今日はやめておこう」につながってしまうんです。
味や雰囲気には満足していても、「利用するタイミングが判断できない」という迷いが残ってしまう。
その他の例として、BtoBのデザイン制作会社でも同じです。
「料金表は出しているし、問い合わせフォームもある」けれど、
実際にクライアントが悩むのは、「この程度の修正依頼をしていいのか」「制作期間はどれくらいを想定しておけば良いのか」「優先的に対応してもらえる定額プランはないのか」という部分。
曖昧な領域があると、相談の一歩を踏み出しにくくなり、結果的に他社に流れてしまいます。
つまり「迷い」とは、単に情報が不足している状態ではなく、“お客さんが次の行動に移ろうとした瞬間に、判断材料が欠けている状態” です。
リピートを設計するうえで大切なのは、この見落とされがちな余白をどう埋めるか。
そこを整えることで「また利用しよう」が自然に続いていきます。
対策①利用シーンを想像し、リピートされる商品を用意しよう
先ほども少し触れましたが、「そもそもリピートされるような商品サービスが用意されていない問題」は意外と多くの現場で目にします。
まず、その典型的な例として住宅会社が挙げられます。
家づくりは一度してしまえば、次にまた家を建ててもらう機会はほとんどありません。
アフターメンテナンスなどのプランは用意されていますが、それも数年後の話になります。
つまり、サービス自体には満足してもらえていても、リピートしたくなる商品やサービスが存在しないことで、再び利用する機会が生まれないという状況です。
もちろん、会社ごとの戦略や事業領域によって一概には言えませんが、アフターフォロー以外にも暮らしに関わるサービスやプランを持つだけで、リピートは確実に増やせます。
そのリピート需要だけで大きな収益が見込めなかったとしても、
一度深く関わり、継続的にお客様と接触できる機会があること自体が、企業にとって大きなプラスになるのは間違いありません。
(口コミや紹介、特別なイベントの際に協力してもらえたりする)
住宅会社に関わらず、先ほど例にあげたカフェにおいても、
例えば、仕事帰りのテイクアウトで「ドリンク+甘いもの」の比率が高いのに、組み合わせを毎回選ばせている。
→ 17時以降は“帰り道セット(ドリンク+小菓子)”をレジ横に常設、会計1アクションで完了するセット商品を用意。
他にも…
- 季節リレー型商品
→例:春は「さくらラテ」、夏は「レモンソーダ」、秋は「パンプキンラテ」…と、シーズンごとに限定フレーバーを展開。
ただし飲み切りで完結するのではなく、「次は◯月から新しい味が登場します」と商品に記載。
お客さんが「次も試してみよう」と思える理由を、商品自体に含ませる。 - 連続性のある体験商品
→例:「世界のコーヒー飲み比べシリーズ」。
1か月ごとに国を変えて提供し、「次はエチオピア」「来月はコロンビア」と続きがある商品構成にする。シリーズ感が“次回も行く理由”になる。 - 持ち帰り連動商品
→例:カフェでしか飲めないスペシャルブレンドを体験した後、同じ豆を小分けで販売。
「家で飲んだらまた店でプロの味を飲みたくなる」という往復動線をつくる。
などなど、アイディア色々あると思います。
つまり、商品サービスを通じて次回利用のための動機を作ってあげるイメージです。
逆に、こうした取り組みや工夫がなければ「気が向いたときに行けばいいや」くらいに捉えられてしまい、結果的に別のお店の方が利用頻度が高くなってしまう状況になります。
なので、まずは今の商品サービスの提供方法だけでリピートしたくなるのかを、一度振り返ってみていただければと思います。
対策②利用しやすくするコミュニケーションを設計しよう
リピートは「思い出したときに、迷わず次の行動が取れるか」で決まります。
取り急ぎやることは3つだけ。
①利用度合いと利用シーンを先読みして、タイミング良く案内する。
②頻度は一定に保ち、内容は一通につき一テーマで完結させる。
③既存顧客に確実に届く“拠点”を決め、そこに情報を集約する。
チャネルは増やすより、見に行けば分かる場所を明確にする方が効果的です。
たとえば、カフェなら、公式LINEで「今週のおすすめメニュー」や「混雑の少ない時間帯」を、先読みした良きタイミングに配信するだけで、“行くタイミング”をイメージしてもらいやすくなります。
さらに「次回のドリンク50円引きクーポン」を一緒に送れば、再訪のきっかけが強まります。
BtoBにおけるデザイン制作会社の例なら、納品数ヶ月後に“サイトの分析レポート”を提示し、現状を把握しやすい情報と判断を簡単にする。
など…
上記はごく一部の例ではありますが、兎にも角にも大事なのは、その時々の顧客の状況を想像し、“タイミングを決めて、価値ある情報をシンプルに1つ伝える”ということ。
新作や季節の情報、便利なプランなどをまとめて一度に送りたくなりますが、それは逆に迷いを生んでしまいます。
「今回はこれだけ」と絞る方が、次の行動をとってもらいやすいんです。
リピートを促すコミュニケーションの基本は、「お客さんが迷わず次の一歩を踏み出せるようにする」こと。
そのためにできるのは、
- 配信のタイミングを決めておく(例:毎週月曜朝に「今週のお知らせ」)
- 伝える内容は1つに絞る(例:「今週は抹茶ラテが登場!」だけ)
- 情報を受け取れる場所(LINEやインスタグラムなど)を明確し、その場所自体の案内も各顧客との接触ポイントにおいて着実に行う(例:LINEやインスタグラムなど)
この3つを意識するだけで、無理なく“また行こう” “また頼もう”につながっていくはずです。
「満足してもらえれば、自然とまた利用してくれるだろう。」そう信じてしまうのは危険です。
顧客との関係性を育てる視点が欠けているからです。
リピート設計とは、きっかけづくり。
リピート設計とは、単に売上を上げる仕組みづくりではありません。
それは「これからもあなたと関わり続けたい」という意思を、お客さんに伝えるメッセージです。
さらに言えば、関係性を育むためのきっかけづくり。
迷いをなくす工夫。
次回を想起させる商品。
そして必要なときに届くシンプルな案内。
これらはすべて、お客さんにとって「ここなら安心して任せられる」「ここにいけば良い体験ができる」という信頼に変わっていきます。
忘れてはいけないのは、リピートは偶然には生まれないということ。
設計があるからこそ、積み重なるんです!
売る瞬間よりも、その後の体験をどうつくるか。
そこにこそ、ブランドの価値が積み重なります。
売った後こそが、本当の勝負。
この視点を持つだけで、日々の施策は大きく変わります。
おわりに
冒頭にも書いた通り、リピーターやファンを増やしていくことは、企業の経営基盤を強くすることにつながります。
特に今後の日本では人口減少が進み、新規顧客の獲得だけに頼るモデルはますます難しくなる。
だからこそ「今いるお客さんに、もう一度選んでもらう」ことが経営の安定に直結します。
今後も定期的にリピーターを増やしていくために、今日からできる工夫について整理していきたいと思います。
前回のvol.1記事もあわせて読むと理解が深まると思いますので、ぜひこちらもチェックしてみてください。
【なぜリピートされない?vol.1】見た目で選ばれた商品が、2回目に選ばれない理由
この記事を書いた人

クリエイティブディレクター
萩原 雅貴
これまで100を超えるブランドのWEB・デザイン・クリエイティブディレクションを担当。固有の価値を伝える現場において、ビジョン・コンセプト開発、事業戦略設計、制作クリエイティブディレクション、執筆まで。ものづくりに情熱を注ぐ人や組織と手を組み、情報ではなく情緒でつなぐことを指針に活動。ブランドマネージャー1級


