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中小企業のブランディング成功事例10選!選ばれる仕組みをつくる秘訣とは

この記事のまとめ

ブランディングに取り組むと、価格競争から抜け出して、自社の価値で選ばれる状態をつくることができます。
この記事では、実際に成果を上げた中小企業のブランディング事例を10件紹介し、売上を伸ばす秘訣を整理します。


  • ブランディングとは「選ばれ続ける仕組みをつくること」であり、単一事業が多い中小企業ほど企業イメージが売上に直結しやすい。
  • 地域資源の活用、SNSやDtoCによる世界観の発信、外部デザイナーとの連携など、中小企業ならではのアプローチで成功した事例が多い。
  • 成功事例に共通するのは、生産者の思いや地域特性を軸にしたストーリーの一貫性と、伴走型支援・専門家の活用である。
  • 関係者との意思統一や資金確保など、事前に確認すべき注意点を把握しておくことが失敗を防ぐ。


中小企業ブランディングの基本

ブランディングの定義と目的

ブランディングとは、企業や商品の愛される理由(独自価値)を基点に、一貫したイメージをステークホルダーと共有し、共感や応援を生むための戦略や活動です。
(選ばれ続ける仕組みづくり)


機能や価格だけでは差がつきにくい時代において、選ばれるために重要なのは、顧客との接点でどれだけ共感を生み出せるかです(参照*2)。
少し便利、少し安いというだけでは、選ばれる理由にはなりません。

だからこそ、差別化の鍵になるのが、企業が提供する価値やストーリーへの共感です。


そのため、ブランディングの目的はロゴやデザインの刷新にとどまりません。

価値観やストーリーを通じた共感づくりが選ばれる仕組みの核であり、「この会社から買いたい」と感じてもらう関係をつくることが本質です。


中小企業にこそ必要な理由

中小企業では企業イメージが売上を左右しやすく、ブランディングの成否が経営全体に直結します(参照*3)。

単一事業を手がけるケースが多く、一つの商品やサービスが経営に与える影響が大きいためです。


ただ、この構造は裏を返せば強みでもあります。

事業の数が限られているぶん、全社で一貫したメッセージを発信しやすく、経営者の価値観や想いをそのまま商品やサービスに反映できます。

ブランドの方向性を経営者の判断で素早く決められるのも、大企業にはないスピード感です。


さらに、限られた経営資源だからこそ、自社の強みに集中させる判断がしやすく、価格だけに頼らない「愛される理由」を育てられます。


つまり中小企業は、ブランディングの影響が大きいからこそリスクもあるが、それ以上に取り組む価値と適性がある。構造上、ブランディングの好機を持った存在なんです。


ブランディングの種類と手法

企業ブランディングと商品ブランディング

ブランディングには、大きく2つの取り組み方があります。

一つは、企業そのものの信頼や価値観を軸にする「企業ブランディング」。
もう一つは、個々の商品やサービスの魅力を軸にする「商品ブランディング」です。

企業と商品、どちらの「愛される理由」を基点に取り組むかの違いであり、その積み重ねの先に築かれる資産が、それぞれ企業ブランド、商品ブランドです。


ただ、中小企業では企業名と主力商品が一体になっているケースも多く、両者を分けずに取り組むこともあります。そして実際の取り組みでは、ブランドを「どう伝えるか」と「経営にどう根づかせるか」の両面が問われます。


伝え方の面で注目されているのが、消費者への直接販売(Direct to Consumer:DtoC)です。

DtoCでは売り方を自社で決められるため、自社のECサイトを通じて、製品の世界観や開発秘話、使用感といった商品の魅力を存分に発信できます。

同時に、その背景にある企業の技術力や経営者の価値観も伝えられる。

こうした発信の積み重ねが、商品ブランドと企業ブランドの両方を育てていきます(参照*4)。


一方、経営に根づかせる面で参考になるのが、デザイン経営という考え方です。

特許庁が公開した「中小企業のためのデザイン経営ハンドブック」では、デザイン経営を「人格形成」「文化醸成」「価値創造」の3つの観点で捉えています。


企業の人格を定義し、社内の文化を育て、その土壌から新しい価値を生み出す。

ブランディングを一時的な施策ではなく経営の中心に据えることで、企業ブランドと商品ブランドの土台が築かれていきます(参照*5)。


地域ブランドの活用とリブランディング

ここまでは、企業や商品の魅力をこれから発信し、経営に根づかせていく取り組みを見てきました。

一方で、中小企業には最初から手元にある資産があります。

長く商売をしてきた土地とのつながり、そして既存の商品やブランドそのものです。ここでは、そうした「すでにあるもの」を基点にする手法を2つ紹介します。


一つ目は、地域ブランドの活用です。

経済産業省は「地域ブランド化」を、地域発の商品・サービスのブランド化と地域イメージのブランド化を結びつけることで好循環を生み出し、地域外の資金や人材を呼び込みながら持続的な地域経済の活性化を図ること、と定義しています(参照*6)。

地域ぐるみでブランドを育てていく、地域全体としての枠組みです。


個々の中小企業にとって重要なのは、この好循環に自社が参加できることです。

「この土地だから生まれた商品」という物語は商品の価値を高め、その商品が知られることで地域の名前も広がる。一社の広告予算では買えない信頼やイメージを、地域という共有資産から引き出せる。

単独では発信力に限りがある中小企業にとって、大きな追い風になります。


二つ目は、既存のブランドを見直して再構築する「リブランディング」。

長く続く企業ほど、商品は良いのに見せ方が時代とズレてきた、創業時のターゲットと今の顧客が変わってきた、といった課題を抱えがちです。


リブランディングは、事業環境の変化に合わせて商品の存在意義(パーパス)やコンセプト、パッケージ、ターゲットを再設計し、ブランドの価値を現在の市場にフィットさせる取り組みです。


大切なのは、これがゼロからの作り直しではないこと。長年培ってきた技術や品質、顧客との信頼といった資産はそのままに、「伝わり方」を今の時代に合わせて磨き直す。積み重ねてきた歴史がある企業だからこそ使える手法。


地域とのつながりを生かすか、既存ブランドの資産を生かすか。(もしくは両方をうまく活用するか。)

入口は違いますが、どちらも新しく何かを持ってくるのではなく、自社がすでに持っている愛される理由を再発見・再解釈し、磨き上げるアプローチです。


次章では、こうした手法を実践して成果を上げた10の事例を紹介します。


成功事例10選

ヤギミルクアイス「産み愛す」の地域密着ブランド

福岡県宇美町の乳製品メーカーは、商工会の支援を受けて山羊の乳を使ったヤギミルクアイスのブランド化に取り組みました。

ブランド名を「うみあいす」から「産み愛す」に変更し、「産み」に宇美町の地名の由来を重ねることで、地域に根ざしたブランドストーリーを構築しています。

ふるさと納税の返礼品への登録や地域飲食店との連携など、地元とのつながりを軸に販路を広げています(参照*1)。

商品名に地名の由来を織り込むことで、消費者が自然と地域の物語に触れる導線をつくれた点がこの事例のポイント。

「土地との結びつき」が、差別化の核になっています。


トウキ葉オーガニック化粧品のSNS活用

富山県富山市の企業は、地域産業資源である「トウキ葉」の有効成分を抽出したオーガニック化粧品を開発しました。

企画・製造・販売の費用の一部をクラウドファンディングで調達し、SNSと組み合わせることで、自然派やオーガニックに関心の高い層にブランドの世界観やストーリーへの共感を広げています(参照*1)。

資金調達とブランド認知の拡大を同時に実現できた点が、この事例のポイントです。

クラウドファンディングの支援者が初期ファンになり、SNS発信を通じて口コミが広がる好循環をつくっています。


OTA KNITの地場産業リブランディング

群馬県太田市の企画販売会社は、地域のニット産業の復活を目指し、市内のニット工場と連携して地域ブランド「OTA KNIT(太田ニット)」を立ち上げました。

商品開発とブランド浸透を進めた結果、若年層への認知が広がり販路が拡大しています。

市内の工場でOTA KNITのファクトリーブランドが新たに誕生するなど、リブランディングの効果が地域全体に波及している事例です(参照*1)。

一社だけでなく地域の製造拠点を巻き込んだことが、産地全体の活性化につながった点がこの事例のポイントです。連携の広がりが、ブランドの持続性を高める要素になります。


南会津・木製玩具の海外展開

福島県南会津町の木製玩具メーカーは、地域の木工産業のブランディングに取り組みました。

外部のデザイナーや地域の木材店・木工所と連携し、「子供達が、木の温もりを感じ、安心して遊べるおもちゃ」をコンセプトに国産木製玩具のブランドを立ち上げています。

デザイン性と高品質を兼ね備えた商品は子育て層から評価され、国内の百貨店やショッピングセンターへの販路拡大につながりました。
さらに、欧州の見本市でも高い評価を受け、海外展開の可能性も広がっています(参照*1)。

地域の伝統素材にデザインの力を掛け合わせることで、海外市場にも通用するブランドが生まれた点がこの事例のポイントです。


今治タオルの品質基準ブランド戦略

今治商工会議所は、2006年度から四国タオル工業組合および今治市と連携し、「今治タオルプロジェクト」を進めています。

ブランディングにはクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を起用し、業界団体よりも厳しい独自の審査基準を設けました。タオルソムリエやタオルマイスターといった制度も創設し、品質を保証する仕組みでブランドを守っています(参照*6)。

品質基準と人材制度の両面からブランドを支えている点が、この事例のポイント。
基準をクリアした商品だけがブランドを名乗れる仕組みが、消費者の信頼を積み上げています。


東洋スチールのDtoCブランディング

東洋スチールは、工具箱のEC市場の規模を国内だけでも現状の3倍で1億円以上、海外も含めればその数倍になると見込み、2020年にDtoCに取り組むプロジェクトを立ち上げました。

プロジェクト名は「東洋スチールのグローバルブランディングプロジェクト~ブランディングとITを用いた経営戦略~」。

消費者へのアピールポイントを「職人のこだわり」「使い方は自由自在」「メード・イン・ジャパンの名にふさわしいクオリティ」「インテリアのポイント」など、技術力や製品のストーリーが伝わる内容に切り替えました(参照*4)。

BtoB中心だった製品の訴求軸を消費者の生活シーンに合わせて再設計した点が、この事例のポイントです。

DtoCを通じて自社の言葉で価値を届ける仕組みを整えています。


石川鋳造のSNS起点フライパンブランド

鋳鉄鋳物の製造業者である石川鋳造は、底の鉄板が厚いほど肉をおいしく焼けるという特性を生かしてフライパンを試作しました。

主な集客方法はSNSで、インスタグラムやツイッターも活用しています。
価格は当初9,720円でしたが、その後、料理研究家が監修したレシピブックを付けて1万1,000円に値上げしたものの、売れ行きが下がることはなかったといいます(参照*4)。

値上げしても売上が落ちなかったのは、SNSを通じて製品の価値が十分に伝わっていたからといえます。
レシピブックを付けることで「おいしく焼ける体験」まで含めたブランドを築いた点が、この事例のポイントです。


福島・酒蔵の新銘柄ブランド化

福島県のある酒蔵は、もともと地元向けの普通酒がメインでした。

ブランド化を念頭に新銘柄を立ち上げ、流通ルートや売り出し方などマーケティング面を工夫した結果、新銘柄の販売が好調になっただけでなく、新銘柄のブランド力によって普通酒の引き合いも高まる好循環が生まれています(参照*7)。

新銘柄を「旗印」として立てることで、既存商品の価値まで引き上げる波及効果が出た点がこの事例のポイントです。


梅月堂の老舗リブランディング

鹿児島県の菓子メーカー、梅月堂では、4代目が経営改善のために商品を値上げし、包装を現代的に大きく変えましたが、逆効果になりました。

その経験を踏まえて自社の歴史や「らしさ」を改めて整理し、ミッションとビジョンを言語化したうえで、働く女性に向けた新商品を開発しています(参照*8)。

見た目だけの刷新では成果が出なかった経験を経て、自社の本質的な強みに立ち返った点がこの事例のポイントです。

リブランディングでは、企業の核となる価値観の言語化が欠かせないことを示しています。


栃木・農家の玄米商品ブランド刷新

栃木県の農家は、自家米の玄米餅や玄米スナックを開発・販売していましたが、補助金を活用して販路開拓のためのリブランディングに取り組みました。

商品コンセプトを明確にした統一感のあるロゴの作成や、店舗名にある「わくわく」するようなパッケージへの改良など、具体的な表現でブランド価値を高めています。東京の物産展に出展し、取引先の開拓にも成功しました(参照*9)。

補助金を活用しながらロゴやパッケージといった目に見える要素を統一したことで、商品の世界観が一目で伝わるブランドに生まれ変わった点がこの事例のポイントです。


事例に共通する成功要因

ストーリーと世界観の一貫性

前章で紹介した10の事例には、ストーリーと世界観が一貫しているという共通点があります。

バイヤーが地域産品を評価する際の調査では、商品の品質・おいしさ・安全性を前提としたうえで、最も重視されるのは生産者の思いやこだわり、地域特性、ストーリー性。


さらに、それを他者に伝えたくなるような独自性や面白さがあるかどうかも重要な観点です。(参照*6)。

こうした共感をつくるためには、生活者を単なるターゲットとしてではなく、一人の人として捉えることが出発点になります。


どんな瞬間に何を感じ、どう行動しているかを理解し、机上の仮説ではなく現場で生まれる小さな発見を拾い上げていくことがポイントです。(参照*2)。


この考え方は、各事例にも色濃く表れています。

「産み愛す」の地名由来のネーミング、石川鋳造のレシピブック付きフライパン、梅月堂のミッション言語化など、いずれも商品の背景にある物語を一貫して届ける設計になっています。

ストーリーと世界観がぶれなければ、価格を上げても顧客が離れにくくなる。
複数の事例がそのことを裏付けています。


外部専門家・支援機関の活用

もう一つの共通要因は、自社だけで完結させず、外部の専門家や支援機関の力を借りている点です。

中小企業庁の「中小企業白書」に記載された調査によると、デザイン経営を導入している企業が感じている効果として、「企業のブランド構築やブランド力向上」が69%、「魅力ある商品・サービス・事業の創出」が53.1%、「従業員の意欲や自社への愛着心の向上」が51.8%という結果が示されています(参照*5)。


この結果からも、デザイン経営は見た目を整えるだけの取り組みではなく、ブランド構築や事業づくり、組織づくりにも関わるものだと分かります。

そのため、デザインだけを切り離すのではなく、経営戦略と結びつけながら進めることが重要です。


また、多種多様な中小企業のニーズに応えるためには、個々の状況に合った人材とのマッチングを進める伴走型支援が望ましいとされています(参照*3)。


実際に、南会津の木製玩具メーカーは外部デザイナーと連携し、今治タオルはクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を起用しています。

外部の視点と支援を取り込むことがブランディング成功の大きな後押しになっており、自社だけでは気づけない強みを引き出す有効な手段といえます。


失敗を防ぐ注意点

ブランディングは、進め方を誤ると時間と費用をかけても成果が出ず、場合によっては逆効果になることがあります。

梅月堂の事例では、商品の値上げと包装の刷新に踏み切ったものの、結果は裏目に出ました。

歴史や自社らしさを見つめ直すより先に見た目を変えてしまったことが原因で、その後はミッションとビジョンの言語化を起点に立て直しを図っています(参照*8)。


組織や地域を巻き込むブランディングでは、合意形成と資金面の壁にも注意が必要。

地域ブランディングの課題を尋ねた調査では、「関係者との意思統一・協力関係の構築」と「事業資金の調達・財源確保」がともに36.2%で最多となり、「意欲的な事業者の参画」が32.9%でそれに続いています(参照*6)。

人と資金、どちらの問題も早めに手を打っておくと安心です。


また、どれだけ熱心にメッセージを発信しても、受け手の経験の文脈に届かなければ共感は生まれず、一方通行で終わってしまいます(参照*2)。

失敗を防ぐためには、

  • 自社の強みを整理すること
  • 関係者と認識を合わせること
  • 顧客の目線で発信内容を組み立てること

この3つを事前に確認しておくと、ブランディングの取り組みをより確かなものにできます。


おわりに

10の事例が示すように、中小企業のブランディングは大きな広告予算がなくても実現できます。

地域資源の活用、SNSやDtoCでの世界観発信、外部専門家との連携、そして一貫したストーリー。
自社の強みに合った方法を選ぶだけで、売上を伸ばす道筋は見えてきます。

まず取り組んでほしいのは、自社の歴史や商品の背景にある価値を言葉にすること。

それだけで、「選ばれる仕組み」への入口は確かに開きます。


参照

この記事を書いた人

クリエイティブディレクター

萩原 雅貴

これまで100を超えるブランドのWEB・デザイン・クリエイティブディレクションを担当。固有の価値を伝える現場において、ビジョン・コンセプト開発、事業戦略設計、制作クリエイティブディレクション、執筆まで。ものづくりに情熱を注ぐ人や組織と手を組み、情報ではなく情緒でつなぐことを指針に活動。ブランドマネージャー1級

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